うしとみしよぞ いまはこひしき
永らへば また此頃や しのばれむ うしと見し世ぞ 今は戀しき
あらはれわたる せぜのあじろぎ
朝ぼらけ 宇治の川ぎり たえだえに あらはれ渡る 瀬々のあじろぎ
はげしかれとは いのらぬものを
憂かりける 人をはつせの 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
いまひとたびの みゆきまたなむ
小倉山 峯のもみぢ葉 心あらば 今一度の みゆきまたなむ
かたぶくまでの つきをみしかな
安らはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな
いくよねざめぬ すまのせきもり
淡路島 かよふ千鳥の 鳴く聲に いく夜ねざめぬ 須磨の關守
ひとこそしらね かわくまもなし
わがそでは 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそしらね かわく間もなし
みかさのやまに いでしつきかも
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
みのいたづらに なりぬべきかな
哀とも いふべき人は おもほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
ふじのたかねに ゆきはふりつつ
田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
ひとにはつげよ あまのつりぶね
わたのはら 八十島かけて こぎ出でぬと 人には告げよ あまの釣船
はなよりほかに しるひともなし
もろともに あはれと思へ 山櫻 花より外に 知る人もなし
ありあけのつきを まちいでつるかな
今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待出でつるかな
まだふみもみず あまのはしだて
大江山 いく野の道の 遠ければ まだ文も見ず 天のはし立
ひとをもみをも うらみざらまし
逢ふことの 絶えてしなくば なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
おきまどはせる しらぎくのはな
心あてに をらばやをらむ はつしもの 置きまどはせる 白菊のはな
わがころもでは つゆにぬれつつ
秋の田の かりほの庵の とまをあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
たつたのかはの にしきなりけり
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の にしきなりけり
ぬれにぞぬれし いろはかはらず
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞぬれし 色はかはらず
くもゐにまがふ おきつしらなみ
和田の原 こぎ出でて見れば 久方の 雲ゐにまがふ 沖津白なみ
わがころもでに ゆきはふりつつ
君がため はるの野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪はふりつつ
ゆくへもしらぬ こひのみちかな
由良の門を わたる舟人 かぢをたえ ゆくへも知らぬ 戀の道かな
ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人めよくらむ
あしのまろやに あきかぜぞふく
夕されば 門田のいなば おとづれて あしのまろやに 秋風ぞふく
いかにひさしき ものとかはしる
なげきつつ 獨りぬる夜の あくるまは いかに久しき ものとかはしる
ひとしれずこそ おもひそめしか
戀すてふ わが名はまだき たちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
ふりゆくものは わがみなりけり
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
ころもほすてふ あまのかぐやま
春すぎて 夏きにけらし 白妙の 衣干すてふ 天のかぐ山
なこそながれて なほきこえけれ
瀧の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて 猶聞こえけれ
ながながしよを ひとりかもねむ
足曳の 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を 獨りかも寝む
よをおもふゆゑに ものおもふみは
人もをし 人も恨めし 味氣なく 世を思ふ故に 物おもふ身は
よをうぢやまと ひとはいふなり
わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
よにあふさかの せきはゆるさじ
夜をこめて 鳥の空音は はかるとも 世に逢坂の 關はゆるさじ
ころもかたしき ひとりかもねむ
きりぎりす なくや霜夜の さむしろに 衣かたしき 獨りかもねむ
しづこころなく はなのちるらむ
久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
いづこもおなじ あきのゆふぐれ
淋しさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこも同じ 秋のゆふぐれ
かこちがほなる わがなみだかな
嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな
あまのをぶねの つなでかなしも
世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ 海士の小舟の 綱でかなしも
よしののさとに ふれるしらゆき
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに よしのの里に 降れる白雪
あはれことしの あきもいぬめり
契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり
すゑのまつやま なみこさじとは
契りきな かたみに袖を しぼりつつ すゑの松山 波こさじとは
ねやのひまさへ つれなかりけり
夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨の隙さへ つれなかりけり
みそぎぞなつの しるしなりける
風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける
しるもしらぬも あふさかのせき
是れやこの 行くもかへるも 別れては 知るもしらぬも 逢坂の關
ひとのいのちの をしくもあるかな
忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の をしくもあるかな
かけじやそでの ぬれもこそすれ
音に聞く たかしの濱の あだ浪は かけじや袖の ぬれもこそすれ
けふをかぎりの いのちともがな
忘れじの 行末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな
なほあまりある むかしなりけり
百敷や 古き軒端の しのぶにも 猶あまりある 昔なりけり
つらぬきとめぬ たまぞちりける
白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
くもがくれにし よはのつきかな
巡りあひて 見しや夫とも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな
やまのおくにも しかぞなくなる
世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞなくなる
みだれてけさは ものをこそおもへ
長からむ 心もしらず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ
かひなくたたむ なこそをしけれ
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそをしけれ
ただありあけの つきぞのこれる
ほととぎす なきつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる
ながくもがなと おもひけるかな
君がため 惜しからざりし 命さへ ながくもがなと 思ひけるかな
くものいづこに つきやどるらむ
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらむ
ひとにしられで くるよしもがな
名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
やくやもしほの みもこがれつつ
來ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに やくや藻塩の 身もこがれつつ
うきにたへぬは なみだなりけり
思ひわび さても命は ある物を うきにたへぬは 涙なりけり
いでそよひとを わすれやはする
有馬山 ゐなの笹原 風ふけば いでそよ人を 忘れやはする
ひるはきえつつ ものをこそおもへ
御垣守 衛士のたく火の 夜はもえて 晝は消えつつ 物をこそ思へ
ものやおもふと ひとのとふまで
忍ぶれど 色に出でにけり わが戀は 物や思ふと 人の問ふまで
こゑきくときぞ あきはかなしき
奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 聲きく時ぞ 秋はかなしき
とやまのかすみ たたずもあらなむ
高砂の 尾上の櫻 咲きにけり 外山の霞 たたずもあらなむ
わがたつそまに すみぞめのそで
おほけなく 浮世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖
こひぞつもりて ふちとなりぬる
筑波嶺の みねより落つる みなの川 戀ぞつもりて 淵となりぬる
さしもしらじな もゆるおもひを
かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな もゆるおもひを
からくれなゐに みづくくるとは
千早振る 神代もきかず 竜田川 から紅に 水くくるとは
みをつくしても あはむとぞおもふ
佗ぬれば 今はたおなじ なにはなる みをつくしても あはむとぞ思ふ
ひとめもくさも かれぬとおもへば
山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人めも草も かれぬと思へば
あかつきばかり うきものはなし
有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり うきものはなし
ひとづてならで いふよしもがな
今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな
ながれもあへぬ もみぢなりけり
山川に 風のかけたる 柵は 流れもあへぬ 紅葉なりけり
ふるさとさむく ころもうつなり
みよし野の 山の秋風 小夜更けて ふる郷さむく 衣うつなり
みをつくしてや こひわたるべき
難波江の 蘆のかり寝の ひと夜ゆゑ 身を盡てや 戀わたるべき
いつみきとてか こひしかるらむ
みかの原 わきてながるる いづみ川 いつみきとてか 戀しかるらむ
わがみひとつの あきにはあらねど
月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど
むべやまかぜを あらしといふらむ
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐と云ふらむ
まつとしきかば いまかへりこむ
立別れ いなばの山の 峯に生ふる まつとしきかば 今かへりこむ
むかしはものを おもはざりけり
逢見ての 後の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり
あまりてなどか ひとのこひしき
浅ぢふの をのの篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の戀しき
わがみよにふる ながめせしまに
花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
なほうらめしき あさぼらけかな
明ぬれば 暮るるものとは 知りながら 猶恨めしき 朝ぼらけかな
くだけてものを おもふころかな
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな
きりたちのぼる あきのゆふぐれ
村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕ぐれ
まつもむかしの ともならなくに
誰をかも しる人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
あはでこのよを すぐしてよとや
難波がた 短き蘆の ふしの間も 逢はで此世を すぐしてよとや
もみぢのにしき かみのまにまに
此の度は ぬさも取あへず 手向山 紅葉のにしき 神のまにまに
をとめのすがた しばしとどめむ
天津風 雲の通路 ふきとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
はなぞむかしの かににほひける
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける
けふここのへに にほひぬるかな
いにしへの 奈良の都の 八重櫻 けふ九重に 匂ひぬるかな
こひしかるべき よはのつきかな
心にも あらでうき世に 長らへば 戀しかるべき 夜半の月かな
こひにくちなむ なこそをしけれ
恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 戀に朽ちなむ 名こそをしけれ
みだれそめにし われならなくに
陸奥の しのぶもぢずり 誰故に 亂れそめにし われならなくに
ひとこそみえね あきはきにけり
八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は來にけり
しろきをみれば よぞふけにける
鵲の 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける
もれいづるつきの かげのさやけさ
秋風に 棚引く雲の 絶間より もれ出づる月の 影のさやけさ
いまひとたびの あふこともがな
あらざらむ 此世の外の 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふ事もがな
われてもすゑに あはむとぞおもふ
瀬をはやみ 岩にせかるる 瀧川の われても末に あはむとぞ思ふ
しのぶることの よわりもぞする
玉の緒よ たえなばたえね 永らへば 忍ぶる事の よわりもぞする
あい
あきか
あきの
あけ
あさじ
あさぼらけあ
あさぼらけう
あし
あまつ
あまの
あらざ
あらし
ありあ
ありま
あわじ
あわれ
いに
いまこ
いまは
うか
うら
おおえ
おおけ
おおこ
おく
おぐ
おと
おも
かく
かさ
かぜそ
かぜを
きみがためお
きみがためは
きり
こい
こころあ
こころに
こぬ
この
これ
さ
しの
しら
す
せ
たか
たき
たご
たち
たま
たれ
ちぎりお
ちぎりき
ちは
つき
つく
ながか
ながら
なげき
なげけ
なつ
なにし
なにわえ
なにわが
はなさ
はなの
はるす
はるの
ひさ
ひとは
ひとも
ふ
ほ
みかき
みかの
みせ
みち
みよ
む
め
もも
もろ
やえ
やす
やまが
やまざ
ゆう
ゆら
よのなかは
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